概要

$H \times W$ のグリッドのマス目のそれぞれを頂点としてグラフを考えるとき、行や列に対応する $H + W$ 個の頂点からなる二部グラフを考えるとうまくいくことがあります。

説明

$H \times W$ のグリッドに対し、行や列に対応する $H + W$ 個の頂点を考え、グリッドのマスのうち注目しているもののそれぞれを辺とします。 つまり、マス $(y, x)$ を行 $y$ と列 $x$ との間の辺 $(y, x)$ とみなします。 グラフは $H + W$ 個の頂点と高々 $H W$ 個の辺を持つものになります。 このグラフは行に対応する頂点の集合と列に対応する頂点の集合からなる二部グラフです。

たとえば $H = 4$ かつ $W = 5$ のグリッド上で $K = 5$ 個の頂点 $(0, 0), (1, 2), (1, 4), (2, 3), (3, 1)$ に注目する場合を考えてみましょう (図1)。 この場合には対応する二部グラフは $H + W = 9$ 頂点かつ $K = 5$ 辺のグラフになります (図2)。

元々のグリッドは、マスを頂点とし行や列を共有しているマスの間に辺を張って $H W$ 頂点 $H \cdot {} _ W C _ 2 + W \cdot {} _ H C _ 2$ 辺のグラフと見ることができます。 グリッドに対応するこのようなグラフ上でなんらかの操作 (例: 連結成分の個数を数える) をしたいが $H \cdot {} _ W C _ 2 + W \cdot {} _ H C _ 2$ 本の辺は多すぎてうまくいかないという場合に、行や列に対応する頂点からなるこの二部グラフを使えば、いくつかの性質 (例: 連結成分の個数) を保ったまま辺の本数が $H W$ 本に減ってうまくいくことがあります。

図1. グリッド
図2. 二部グラフ

biadjacency 行列

$H \times W$ のグリッドをそれぞれのマスに注目しているかどうかに応じて $0, 1$ の値を持つ $H \times W$ 行列 $B$ と思うと、行や列に対応する頂点から二部グラフを作ることは行列 $B$ を biadjacency 行列 として持つ二部グラフを構成していると言えます。ただし行列 $B$ が二部グラフ $G$ の biadjacency 行列であるとは、$G$ の隣接行列 $A$ が $A = \begin{pmatrix} 0 & B \cr B^\top & 0 \end{pmatrix}$ というブロック行列で書けることを言います。

たとえば、先程の例のグリッド (図1) を行列として見ると次の行列 $B$ になります。

\[B = \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 & 0 & 0 \cr 0 & 0 & 1 & 0 & 1 \cr 0 & 0 & 0 & 1 & 0 \cr 0 & 1 & 0 & 0 & 0 \end{pmatrix}\]

このとき、この行列 $B$ を biadjacency 行列とする二部グラフの隣接行列 $A$ は次のようになります。

その他

  • グリッドと二部グラフとの間の変換は、なんらかの意味での辺と頂点との入れ替えだと思うことができます1
  • 行に対応する頂点と列に対応する頂点との間に辺を張るのでなく、行や列に対応する頂点と元々のグリッドのマスに対応する頂点との間に辺を張って $H W + H + W$ 頂点 $2 H W$ 辺の二部グラフを考えることもできます。

例題

編集履歴

  • 2021-04-17T13:00:00+09:00: biadjacency 行列について追記2

注釈